安全にスノーケリングを行う為に身につけておきたい7つのスキル

snorkeling dolphin
近年、海でスノーケリングを楽しむ方(スノーケラー)が急増していて、それに伴い、スノーケラーの事故も各地で多発している。
 
このことは、前にコラム『事故件数から見る、スノーケリングの安全性』でもお話をしたが、事故が多発している理由として、スノーケリングをちゃんと学んだことがないスノーケラーが数多くいるということと、スノーケリングを教える者が、“アクシデントを想定した指導”を、しっかりやっていないことが挙げられる。
 
私達のスノーケリング教室では、ただマスク・スノーケル・フィンの使い方と泳ぎ方だけを教えるレッスンは、もちろん行っていない。
 
むしろ、“安全にスノーケリングを楽しむには何を身につけたらいいか”を指導している。
 
その内容は、ダイビングのライセンスをお持ちの方からも“初めて教えてもらった!”と言ってもらえるほど。
 
では、実際にどのような内容なのか。以下は、安全にスノーケリングを行う為に身につけておきたい7つのスキルである。
 
・立ち方(起き上がり方)
・背面泳ぎ(バックキック)
・立ち泳ぎ
・スノーケル呼吸
・水面でのマスク脱着
・スノーケル(シュノーケル)クリア
・マスククリア

 

その① 水面でうつ伏せ状態からの立ち方

前回のコラムで、“スノーケリングを行う際に浮力体(とくにウエットスーツ)を着用すること”と書いた。スノーケリングの最中、スノーケラーはうつ伏せ状態で水面に浮くことになる。しかし、その状態から無理に立とう(起き上がろう)としても、ウエットスーツなどの浮力により足が沈まず、そうこうしているうちに焦って口からスノーケルを外してしまい、水を飲んでしまった…なんていうことがよくある。意外かもしれないが、私はこの“立ち方”こそ、スノーケル初心者の方には一番に覚えてもらいたいスキルだと考えている。
 
 

② 水面での背面泳ぎ(バックキック)

ウエットスーツなどの浮力体があれば、泳ぎに自信がない方でも水面に浮くことができる。ということは、仰向けの状態(このときスノーケルは使用しない)で水面に浮くことも簡単にでき、しっかり呼吸を確保することができる。これは“生存泳”とも呼ばれるもので、この状態で進むことができれば、マスクやスノーケルが無い状態でも(万が一使えなくなってしまっても)、岸やボートまで泳ぐことができる。
 
 

③ フィンワークを使用した立ち泳ぎ

スノーケリングを行う際に、フィン(足ひれ)を使用することはもちろんだが、フィンを使用して泳ぐことよりも、立ち泳ぎを是非とも覚えてもらいたい。何故か。それは、とくに初心者にありがちなことだが、スノーケリング中、不意にマスクやスノーケルを外してしまうことがある。それが足の届くところ(立てるところ)ならば良いのだが、足の届かないところでマスクやスノーケルを外してしまった場合、マスクをつけるのに水面に対して直立の姿勢をとらなければならず、呼吸の確保をする為には、少なくとも顔が水面に出るくらいの立ち泳ぎが必要となる。初心者の方にこの立ち泳ぎをやってもらうと、大抵の方が顔が沈んでしまう。呼吸の確保だけをするのであれば、②でお話したように、水面に仰向け状態で浮けば良いのだが、焦っている(パニックになっている)スノーケラーほど、水面に対して直立の姿勢を取りたがる。立ち泳ぎができることを自分で分かっていれば、問題が起きても慌てずに対処することができるだろう。
 
 

④スノーケル呼吸

マスクをすることで鼻から息を吸うことができなくなり、スノーケルを咥えた状態で呼吸することになる。これが初心者には、始めのうち息苦しさを感じさせるだろう。しかし、これは慣れしかない。呼吸が慣れるまでは、意識的に深呼吸をするようにすると、息苦しさも次第と無くなってくる。
 
 

⑤水面でのマスク脱着

これは③の立ち泳ぎがある程度できるようになってきたらの話だが、海でボートから海に入るスノーケリングをする場合、《マスクをしないで海に入ってしまった・・・》あるいは、《マスクやスノーケルに水が入ってしまい、水面でマスクを外してしまった・・・》などということがよくある。この場合、水面で立ち泳ぎをしながらマスクを装着することができれば、上記のようなアクシデントにも慌てずに対処することができる。立ち泳ぎをする時間だが、少なくとも、マスク・スノーケル無しで1分くらいの立ち泳ぎができるようになると良いだろう。
 
 

⑥ スノーケル(シュノーケル)に水が入ってしまったときの対処法 ~スノーケル(シュノーケル)クリア~

スノーケリングを楽しんでいると、不意にスノーケルの中に水が入ってしまうことが多々ある。例えば、スノーケリング中、顔を下に向けすぎて気付かないうちにスノーケルが水に浸かってしまった、波などを被ってしまった、あるいはスノーケルを咥えている口の緩みで、直接口に水が入ってしまった・・・などが挙げられる。その水を抜くやり方のことをスノーケルクリアというのだが、これがしっかりできないと、毎回水を飲んでしまったり、水面でスノーケルを外してしまい、波を受けて余計に水を飲んでしまうという二次災害的なことが起こってしまうからだ。
 
 

⑦マスクに水が入ってしまったときの対処法 ~マスククリア~

人間は、視界から得る情報というのがほとんどで、その視界が悪くなるとすごく不安になり、パニックに陥ってしまう人もいる。スノーケリングでいうと、マスクの中に水が入ってしまうアクシデントが、それにあたる。そのアクシデントが起こってしまう原因は、マスクの中に髪の毛が入ってしまっていたり、マスクのスカート(顔にあてるゴムの部分)に亀裂が入っていたり。あるいは、顔をしかめるだけでも、マスクに水が入ってきたりする。マスクに水が入るということは、普通に起こることなのだが、これを、“マスクに水が入ってこないように、マスクのストラップはキツく締めましょう”・・・なんてことを言う人がいるが、これは真っ赤なウソ。仮にストラップがなかったとしても、水圧だけで充分マスクは顔に張り付く。マスクのストラップをキツくしてしまったら、顔が潰れてしまい、シワが立って余計に水が入ってしまう。・・・ということで、マスクに水が入ってパニックに陥らないようにするのは、“マスクに水が入らないようにする方法”を考えるのではなく、“マスクに入ってしまった水を慌てずに出す方法”(マスククリア)をできるようになろうというのが結論である。
 
 
上記の7つができるようになるには、やはり反復練習が必要であり、ただやり方や理論だけを知っていても意味がない。スノーケリング講習会に参加をして、安全にスノーケリングを楽しむスキルを、是非とも身につけてもらいたい。